本調査に回答をしていただいた皆様、調査の実施にご協力をいただいた皆様へ
<お詫び>
調査実施から3年余り、当初の計画より大幅に結果公表が遅れて申し訳ありませんでした。「精神科医にこそ、この結果を見てほしい。それにはすべての精神科医が所属する学会の学会誌に結果の論文を載せること」と考えて、精神神経学会の会員向けの雑誌へのアンケート調査の論文掲載をめざしたために、審査などで時間がかかってしまったことが大幅に遅れた理由です。「当事者・家族による精神科医の評価は主観的で、科学的根拠に欠ける」という批判もありますが、診療は本人や家族の主観的な感じ方を通して成立します。公表まで時間はかかりましたが、皆様の回答は価値ある結果だと、私は誇りを持っています。
論文掲載までは公表できず、心苦しく思っておりましたが、昨年の10月25日に、回収総数7234人(質問紙回答 6341人・ネットでの回答 893人)の中で、質問紙回答についての結果の論文が精神神経学雑誌第120巻第10号に掲載されました。皆様のご協力のおかげと、心から感謝を申し上げます。
<結果>
ネット環境にない方や病院・診療所の待合室にも置いていただくために、論文の内容を冊子にしてまとめました。冊子作製のための費用はクラウドファウンディングで集まった資金を使わせていただきました。
このホームページでは、冊子と同じ内容(①)を掲載するとともに、論文には盛り込めなかったネット回答の集計・解析(②)も載せました。
ネット回答いただきました皆様へ、ご協力に心より感謝いたします。
<続報> 自由回答について分析した続報を掲載しました(こちらをクリック)。
なお、冊子をご希望の方は下記の方法によりお手元へお届けが可能です。
① 論文に掲載された結果
※ 精神神経学雑誌 第120巻 第10号「『精神科担当医の診察態度』を、患者・家族はどのように評価しているか ―約6,000人の調査結果とそれに基づく提言―」の論文を引用改変して作成しています。
精神科医のイメージと能力に関する調査報告
~当事者・家族による「精神科担当医の診察態度」の評価~
冊子のダウンロードはこちら(4.91 MB)
精神科医のイメージと能力に関する調査報告<続報>
~「精神科担当医の診察態度」についての当事者・家族による自由記述~
自由回答については長い間、論文にすることができませんでした。皆様から寄せられた記述を的確に解析できる方法を模索し、「言葉を数え上げて、統計的に分析しつつ、言葉がもつ意味も分析に取り入れる方法」(計量テキスト分析)に巡り合えて、やっと論文にまとめることができました。
日本の精神科医療を当事者がどのように見ているのかを世界にも知ってほしいと思い、イギリスの学術誌 BMC Psychiatry に投稿して掲載されました。
BMC Psychiatry は世界中で読まれている雑誌です。これを機会に日本の精神科医療の実態を日本の外から眺めることで、日本の精神科医療が変化するきっかけとなれば、アンケートに回答していただいた方々への何よりの御恩返しになると思っています。
論文を日本語版に改定、翻訳して説明を付け、全国の当事者、ご家族、病院、診療所、大学へ配りました。明日からの診療がより良いものになるために、参考にしていただければ幸いです。
精神科医のイメージと能力に関する調査報告<続報>
~「精神科担当医の診察態度」についての当事者・家族による自由記述~
冊子のダウンロードはこちら(3.93 MB)
② ネット回答の結果・解析
問 1. あなたのお立場は、以下のうち、どれにあたりますか。
ネット回答の方が、患者本人の回答が家族より多かったです。
問 2. あなたの年齢を、お教えください。
ネット回答の方が、全体的に若い傾向があります。
問 3. あなたの性別を、お教えください。
ネット回答の方が、患者本人において女性が多かったです。
問 5. ご本人は現在、ひとり暮らしですか、家族と同居ですか。
ネット回答の方が、家族の回答において一人暮らしが多かったです。
問 6. 今までの精神科(心療内科、メンタルクリニック、神経科も含む)の受診で、担当医(主治医)となった医師は、これまでに何人ですか。
ネット回答の方が、担当医変更が少ない傾向がありました。
問7. 担当医が変わった理由は、なんでしょうか。(複数回答) ※問6の2人以上の回答者
ネット回答の方が、医師の都合より自身の希望で主治医の変更をした人が多かったです。
問 8. 現在、通院または入院で利用しているのは次のどの機関ですか。
ネット回答の方が、クリニック通院者が多い傾向がありました。
問 9. 受診している方の現在の病名は次のうち、どれですか。
質問紙回答では7割が統合失調症でしたが、ネットでは統合失調症は5割でうつ病が3割近くあり、発達障害も質問紙回答より多い傾向がありました。
問 10. もし担当医を選ぶことができるとしたら、どのようなことを参考にして選びますか。
本人・家族ともに「人柄・性格」が1位で、質問紙回答で1位だった「処方能力」は3位でした。
問 11. 現在の担当医の「診察態度」について当てはまるものをお選びください。
<好ましくない態度を評価する質問項目>
本人・家族ともに、質問紙回答より厳しい評価が出ています。
<好ましい態度を評価する質問項目>
本人・家族ともに、質問紙回答より厳しい評価が出ています。
問12. 現在の担当医の「コミュニケーション能力」について当てはまるものをお選びください。
<好ましくない態度を評価する質問項目>
本人・家族ともに、質問紙回答より厳しい評価が出ています。
<好ましい態度を評価する質問項目>
本人・家族ともに、質問紙回答より厳しい評価が出ています。
問13. 現在の担当医は、何を中心にして診察をしていると感じますか。(複数回答)
「患者本人の価値観」が1位ではあったが、その割合は質問紙回答より少なく、「医学知識や医学の常識」と回答した人が4割近くありました。
問15. 診察は基本的に患者さん本人一人ですか、家族といっしょですか、あるいは調子が悪いときのみ家族といっしょですか。
問16. 家族だけの面談(相談)を申し入れたとき、「家族とは面談できない」と断られた経験はありますか。
問15、問16は 質問紙回答とほぼ同様の結果で、 半数以上が診察は基本的に本人一人と回答しました。家族の多くは診察時に患者に同席していない場合が多いことが分かります。医師の側が家族の同席を拒否するというより、本人が一人での診察を望んでいる状況も考えられます。様々な問題に対処するためにも、家族の切実なニーズを知るできる限りの工夫と柔軟性が求められます。
問17. 家族として、診察で医師に工夫してほしいことがありますか。(複数回答)※家族:n=320
質問紙回答とほぼ同様で「専門職に話を聞いてほしい」という希望が多いです。
問18. 担当医の家族への対応に関して、当てはまるものをお選びください ※家族:n=320
<好ましくない態度を評価する質問項目>
<好ましい態度を評価する質問項目>
上位の3つは質問紙回答と同じ順位ですが、やはり全体に厳しい評価です。